森と看護士 その② / 森林文化体験セミナー
2月に実施した看護大生のための森の実習2回目の報告を前回に引き続き学生のけいちゃん(星野慧さん)が報告してくれました。
なんちゃって先生 萩原ナバ裕作
<以下学生からの報告>
2月19日、岐阜県立看護大学の学生18人を迎え、「森から木をいただく」と題した授業を行いました。
1月の「森林空間を体験する」に続く、アカデミーでの第2弾の授業です。
まずは焚き火を囲んでの挨拶。
皆で「木を伐(き)ってみよう」ということに決まり、早速山へ出掛けます。
各自ヘルメットを持って準備万端、いざ出発です。
今日も好天に恵まれ、気持ちの良い1日となりそうです。
最初にアカデミー演習林の「山の神様」へお供えする「サカキ」を皆で森の中から探してみました。普段木の葉っぱを見比べることなんてない学生さんたちですが、懸命に見比べながら違いに気付いていたようです。
無事サカキが見つかると、それを山神様にお供えして、今日山の木を一本いただくこと、そして安全に作業ができるようお願いをしました。
日本の神事に欠かせないサカキを通して学生たちは日本の森林文化を少しずつ理解していきます。
もう少し歩いて辿り着いた四寸傘、ここで1日を過ごします。
神事に使われるサカキの他にも、仏事に使う「シキミ」やトトロに出てくる「クスノキ」の匂いを嗅いだり、
解説を聞いたりして五感を使い、日本人に身近な森の木々を紹介しました。
続いて伐る木を選ぶことに。
グループに別れて木を選びます。
ただし、ただ木を伐ることが目的ではなく、「この森をどんな森にしたいか」があって伐るのだとナバさんから最初に注意。
その木を選んだ理由を各グループに説明してもらいました。
「危険だから」「隣の木を大きくしたいから」「使う目的にあった大きさだから」などなどそれぞれ選んだ木も違い、目的や立場によって森を見る目が違っていて、どの木を切るかが全く違う(しかもどれも正解)ということを実感しました。
お昼休憩を挟んで、いよいよ伐る本番です。
木を切るための切れ込みの入れ方について、模型を使ってインタープリテーションの訓練の一環として私が説明しました。
今日はドイツからの留学生ローニャも一緒です。私が行ったこのレクチャー、ドイツの事例も紹介してもらったり、追加で見取り図を作ってもらったり、ローニャにサポートしてもらいとても助かりました。ローニャも私の模型を使った説明はとてもわかりやすくドイツでも真似したいと言ってくれました。
その後、伐ることになった木へ
まずは木にロープをかけます。倒れる方向に引っ張り誘導するためです。
この時は意見を言う人もいれば遠くから見ている人も。ここからチームワークが試されます。
枝が多く時間がかかりましたが、アイディアを出し合ってロープをかけることができました。
次にノコギリで少しずつ切れ込みを入れていきます。
木が倒れる方向を意識させ続ける人、ノコギリの水平を見る人、切れ込みの深さを見守る人、
ノコギリを使う人が滑らないようサポートする人。
1本の木を伐ることに、積極的に関わるメンバーが増えていきます。
ノコギリの扱いに慣れない学生も多い中、少しずつ切れ込みが深くなり、小さな「パキッ」という音が聴こえました。倒れ始める合図です。
ここからは、かけたロープを皆で息を合わせて引っ張ります。
最初は合わなかったタイミングが徐々に合うようになっていき、少しずつ木が倒れていきました。
ここからは、倒れた木を平らなスペースまで引っ張りあげる作業になります。通常の林業現場では倒した木をわざわざ上にあげることは少ないんでしょうが、環境教育では、これをチームビルディングの要素として最適な装置として考えます。
ロープを掛け替えて、引っ張り方を話し合います。
決めたことを全体に伝える人、それを伝達する人、サポートの声かけをする人、と
役割分担がはっきりしてきて、18人に一体感が生まれていく様子を間近で見ることができ嬉しかったです。
1,2,3! 1,2,3!と、全員で力を合わせて引っ張ります。
「休憩しながらやろう」「あともう少し」など、互いを気遣う声掛けも聞かれました。
こうして、大きな木をなんとか引っ張りあげることができました。普段目にすることのできない木の先端まで、グルッと回って見てみます。
市場で取引される価格についてナバさんから解説があり、学生たちはつい先ほどまでの労働と比べてあまりにも木の値段が「安い」ことに衝撃を受けていました。林業の現状についても知ってもらえたと思います。
木を伐った後の儀式として梢を根元に刺し、木の命をいただく感謝とまた大きく育つよう願いを込めてお祈りをしました。
今日の木を伐る授業は終了です。
振り返りの時間には、
「サカキやシキミ、クスノキなど様々な木が森にあって、それを利用していることを知った」
「大人数でチームワークを発揮した経験は、看護の現場でも活かせると思った」 等のコメントがありました。
最後に、森で拾って集めた木や葉で火を起こし、焼き芋を作って、森から木をいただくことの別の一面も感じてもらいました。
看護大の学生の皆さん、楽しく学びある時間をありがとうございました!またお会いしましょう!